膨大な時間を凝縮する タイムラプスの世界

2018.10.04

ART

Special

膨大な時間を凝縮する
タイムラプスの世界

  • twitter
  • facebook
  • line

最近は長時間の風景の移り変わりや、何かのメイキングシーン、また交差点などでの人の流れの撮影などによく使われるタイムラプス動画。スマホなどでも撮れると聞きますが、普通の動画とどう違うのでしょうか。また、その撮影に一番必要なものとは…?

肉眼ではとらえきれないその魅力について、タイムラプス・フォトグラファーの岡さんに、撮影のいろはを監修していただきました。

そもそもタイムラプスとは?

たとえば夕方の太陽や夜空の星を少しの時間眺めてみても、すぐには動きを感じることはできないと思います。しかしタイムラプスでこれらを長時間撮影すると、時間の経過による変化がリアルに描かれ、壮大な自然の躍動感を映し出すことが可能になります。

今やスマホのカメラ機能にも搭載され、手軽に撮れるようになったタイムラプス。さらにクオリティの高い画を映すためには、一眼レフなどを使って、より優秀な広角レンズで撮影し、その後ひと手間かけると、見違えるように映像が進化します。

次の2つの動画を見比べてみてください。

この2つは何が違うと思いますか?

こちらは2つとも、一眼レフカメラで撮影した動画ですが、1つ目の動画は、撮影後、丁寧な編集作業を施したもの。2つ目は、その処理を施す前のものです。

普通の動画とタイムラプスは何が違うの?

実際に目で見た通りを撮影し、その通りに再生できるものが普通の動画です。一方、タイムラプスは、ちょっと見ただけでは気づかない、目には留まらないようなゆっくりとした景色の変化を、時間を圧縮して再生することによって際立たせることを目的にした動画です。

普通の動画は、1秒30コマの静止画像で構成されているのですが、当然、その撮影にかかる時間も1秒。つまり1秒間の出来事を1秒間で再生するのが普通の動画です。

img002

しかしタイムラプスは同じ1秒の長さの動画を得るために、その30コマの間に休み(インターバル)を入れながらゆっくりと時間をかけて撮影します。

img003

10秒間のインターバルを入れて撮影すれば、30コマを撮影するには10秒×30コマ=約300秒=5分かかります。つまりこの場合、タイムラプスでは5分間の出来事を1秒間で再生することになるのです。

このように、時間を圧縮して早回しで映像化することにより、日常では目に見えない、ダイナミックで印象的な動きを見せることができるのがタイムラプスです。また、通常の動画ではひとコマあたり最長1/30秒しか露出(レンズを通してカメラに光を取り込むこと)できませんが、タイムラプスはひとコマあたりの露出時間の制限がないので、暗い星空の撮影ができるのも大きな特長です。

映像の演出イメージを明確にして、どの過程も楽しむことが大切

タイムラプス動画の撮影シーンを選ぶときは、ちょっと見ただけでは変化の少ない風景でも、時間をかけて見るとダイナミックな動きをしているものがおすすめです。たとえば、日の出や日没など、空の情景が大きく変わる時間帯に撮影すると、面白い画が撮れます。

また、カメラをしっかりと固定し、オート露出やオートフォーカス(自動的にカメラの焦点を合わせる機能)を使わないこと、そしてピントを正確に合わせて撮影することが重要です。これは、何百枚も同じ対象に向かってシャッターを切り続け、その変化を、時間をかけて撮影するからです。

そして映像制作に最も必要なのが「忍耐」。タイムラプスは撮影から画像処理まで、根気と集中力が必要とされます。冷たい北風に凍えながらの星空撮影、真夏の炎天下の海辺や都会での撮影なども、できあがる映像を想像して、その課程も楽しむ気持ちが必要です。

普段目にしている景色でも、新たな一面を見せてくれるタイムラプス。そこは実は、想像以上に忍耐が必要な世界でした。しかしそれを我慢強く乗り越えた先に見える映像は、それまでの苦労なんて一瞬にして吹き飛ぶほどの、息をのむような美しさなのです。

今回は一眼レフなどの本格的なカメラを使ったタイムラプス撮影を中心にご紹介しましたが、過ごしやすくなるこれからの季節、まずはスマホのカメラ機能や専用アプリを使って、手軽にタイムラプスを楽しんでみてはいかがでしょう。

Movies by Koichiro Oka

  • twitter
  • facebook
  • line